「王様ランキングって最近名前を聞くけど、絵が好きじゃないし読もうとは思わないな」
おそらく、王様ランキングがつまらないと考えている人はこのように考えているのではないでしょうか?
確かに、雑誌に載っている漫画家のように絵がうまいわけではありませんし、最初の数ページの印象で読む気をなくしてしまった人もいると思います。
ですがこれだけは言わせてください。
なんて勿体ない…!!!!
この漫画にドハマリした私から言わせてもらえば、ちゃんと読まずにつまらないと判断するのは実に勿体ない事です。
人気がある漫画には必ず面白い理由があります。
ここでは、
- 王様ランキングが面白い理由
- 魅力的なキャラクター
- 絵本のような世界が魅せるもの
の3点にスポットを当てて王様ランキングの良さをお伝えしていきます。
この記事を読んだ後、あなたはきっとこの漫画を読んでみたくなるはずですよ?
目次
王様ランキングは本当につまらない?
王様ランキングがつまらないと思われている大きな要因は、
- 絵柄が好きではない
- ストーリーが面白くなさそう
- キャラクターに魅力を感じない
等の理由が大きいと考えられます。
そしてこのように考える人のほとんどが、全く読んでいない、もしくは一話だけ試し読みしてやめてしまった人ではないでしょうか。
ですが、現在進行形で物語を楽しんでいる私から言わせると、これらの意見はこう言い換えられます。
・絵柄が好きではない
→絵本のような世界観が魅力で、読んでいるうちに気にならなくなる
・ストーリーが面白くなさそう
→設定自体はよくあるものだが、予想を裏切られる展開と人間ドラマが面白い
・キャラクターに魅力を感じない
→キャラクターこそがこの漫画の魅力!
奥深い心理描写で描かれているからこそ目が離せない!
王様ランキングには読んでいると止まらなくなる面白さがあります。
私もネットで話題になった時に初めて読みましたが、続きが気になって気になって切り上げるタイミングを完全に失ってしまうほどでした。
それでは、その面白さの秘密について簡単に解説していきましょう。
王様ランキングの面白さとはなにか
王様ランキングのあらすじは次の通りです。
ここではない魔法が存在する世界でのこと。
この世界では国同士の力関係を「王様ランキング」という順位で決めていました。
物語の舞台となるボッス王国は、一代でランキング7位まで上り詰めたとても豊かな国です。
主人公であるボッジはこの国の第一王子ですが、耳が聞こえず非力であることから皆に馬鹿にされていました。
しかし、誰よりも優しい心を持った彼は自分こそが次の王になるのだと、常に立派な王になるための努力を続けていたのです。
そんなある日、ボッジは街のはずれで「カゲ」と名乗る影のような姿をした生物と友達になりました。
初めての理解者を得たこの出会いがボッジの人生を大きく変え、彼の物語を大きく動かしていくことになります。
いかがでしょうか?
このあらすじを読んだだけでは、よくある昔話の導入のように聞こえます。
おそらくこれを読んだだけでは、「主人公がすごい力を手に入れて立派な王様になる物語」という風な印象を受けるのではないでしょうか。
ですがこの物語は、主人公はずっと耳が聞こえない、しゃべれない、非力なままでストーリーは進んでいきます。
友達が不思議な力を持っていて助けてくれる、という展開ではなく、あくまで彼自身が己の現実と向き合いながら成長していく物語、それが王様ランキングなのです。
勿論そんな主人公への風当たりは厳しく、明るくふるまってはいるものの誰も見ていないところでは涙を流すなど見ているだけで心が痛くなる展開が続きます。
(画像引用元:「王様ランキング」1巻 第10話より)
それでもボッジは諦めず、勇気を持って前に進んでいく…。
思わず、「頑張れ!!」と彼の事を応援したくなり、気が付けばページをめくる指が止まらなくなっているのです。
そして、さらに面白いのはボッジを取り巻く登場人物達。
一見ただの嫌なやつであったり敵対しているように見えている人物でも心理描写がとても細かく、それぞれの人間ドラマがとても深く掘り下げられています。
初登場では「性格が悪いな~」と思っていた人物が、実は主人公の事を誰よりも心配していたり、心の中では葛藤していたりと一概に、
「あいつは悪い奴だ!」
とは片付けられません。
誰もが自分の信念や思い、大切なもののために迷い、戦っているからこそ、「なんてひどいことを!でもその気持ちはとても分かる…!」と共感せずにはいられないところもこの物語の面白さの一つなのです。
魅力的なキャラクター達
それでは、この世界を彩る魅力的なキャラクター達を少しだけご紹介しましょう。
ボッジ
(画像引用元:「王様ランキング」1巻 第7話」)
先程もご紹介したこの物語の主人公です。
ボッス王国の第一王子ですが、彼は生まれつき耳が聞こえず、うまくしゃべれないので「あうあう」と言う事でしか自分の気持ちを伝えることができません。
彼なりに努力はしていますが未だに子供用の剣ですらまともに持つこともできないほど非力で、次の王は第二王子である弟、ダイダこそがふさわしいと言われるほどでした。
そんな一見何もできないような主人公ですが、彼のすごいところは何があっても諦めないところです。
周囲からは何も期待されず、心を折られるようなひどい事も何度も経験しています。その度に密かに涙を流しますが、何度倒れても前を向くことをやめないそのひたむきさ、そして何があっても進み続ける勇敢さには心を動かされます。
ボッジを象徴する言葉があるならば、それはまさに「立ち向かう強さ」ではないでしょうか。
カゲ
(画像引用元:「王様ランキング」1巻 第7話)
ボッジが出会った初めての友達、それがカゲです。
最初は彼も、身なりのいいボッジから金目のものを取る事しか考えていませんでした。
ですが、彼が街の住人や周囲からどのような扱いを受けているのか、そして自分の立場を鼻にかけたりしない優しい心の持ち主であることを知ります。
元々暗殺を生業とした一族だったカゲですが、幼いころに国を追われ、一族を皆殺しにされてしまった事からつらい幼少期を過ごしてきました。
そんな日陰で生きてきた彼であるからこそ、同じく誰からも認められることなく孤立していたボッジに共感し、それでも笑顔で振るまう事のできるその強さに心惹かれたのではないでしょうか。
カゲのこの物語での立場を言葉にするなら、「かけがえのないもの」と言えるでしょう。
人は自分を理解してくれる存在がいてこそ、初めて自分の事を認められるものなのです。
ヒリング
(画像引用元:「王様ランキング」1巻 第6話)
ボッジは前王妃の息子なので、第二王妃であるヒリングは彼の継母に当たります。
継母という名のイメージ通り彼女はボッジに対して一際厳しい態度を取り、自分の息子であるダイダばかり可愛がっているようでした。
ですが、彼女の厳しさにはちゃんとした理由があるのです。
実はヒリングは血の繋がっていないボッジの事も実の息子のように愛しています。
だからこそ、何もできないボッジの事を誰より想っていて、王様になる事で彼が傷つき、周囲からの重圧で潰されてしまうのではないかと心配しているのです。
この物語において彼女を表す言葉は「信じられるもの」でしょう。
ヒリングの2人の息子を想う気持ちに偽りはなく、どんな時でも子を想う愛情が変わる事などないのです。
ダイダ
(「王様ランキング」1巻 第4話)
ダイダはこの国の第二王子でボッジの弟です。
周囲からも持ち上げられ出来の悪い兄よりも優れている事からも、自分こそが次の王になるべき存在であると考えています。
しかし、彼はそんな不出来な兄に対してコンプレックスを抱いているのです。
母親からも愛され、家来や民衆からも期待されて自信を持っているにも関わらず、常に心の片隅には兄の存在がひっかかっています。
彼は、自分が苦しい時も常に余裕のある態度を見せている兄の事を目の敵にしており、ボッジを自分の目の前から消すために次第に暗躍するようになります。
ダイダはこの物語においてボッジに敵対するライバルのような存在ですが、彼を言葉で表すなら「曲がる事のない信念」を持った人物であると言えるでしょう。
彼にとって大切なことは、何よりも自分の力でランキング上位の王として認められる事なのです。
まだまだ他にも、常に厭味ったらしい笑顔を浮かべ、悪役のような風貌でありながら二人の王子の事を考えて動く「ベビン」や、ボッジの剣の師でありながらいつまでも強くならない彼に苛立ちを感じ、国の思惑との間で揺れている「ドーマス」など魅力的なキャラクターがたくさんいます。
このような一面だけでは判断できない多様な登場人物達によって、王様ランキングという物語は形作られているのです!
絵本のような世界観
この漫画の一番特徴的なところは、その絵本のような世界観でしょう。
デフォルメされた特徴的なキャラクター達が生きるのは、魔法や不思議な生物も存在するおとぎ話のような世界です。
どちらかといえば児童書などに出てくるような絵柄でなぜ漫画として連載しているのか疑問に思う方もいるかもしれませんが、それもそのはず。
作者である十日草輔先生は、王様ランキングを元々絵本として発表しようと考えていたのです。
作者あとがきによると、
「王様ランキング」はタイトルこそ違いますが絵本として考えていました。
しかし表現したいことが増えたこと、絵本作家への敷居がいろいろ高かったことでマンガになったのです。(引用:「王様ランキング」 第2巻 巻末あとがき)
と書かれています。
Web漫画として発表することでその人気に火が付いた王様ランキングですが、この作風にはそういった経緯がある事を知ると納得できますよね。
「でも、漫画として発表するならもっと人気のある漫画みたいな絵の方がよかったんじゃないの?」と思われる人もいるでしょう。
勿論私も、少年漫画のような画風や迫力のあるバトルシーン等は大好物です。
ですが、この作品は絵本のような世界で描かれるからこそストレートに心に訴えかける魅力があると私は考えています。
王様ランキングは登場人物の丁寧な心理描写とストーリーが人気の漫画です。
もしこの作品を同じ内容でもっと流行りの画風で発表したとしたら、……おそらく今のような人気は出ていなかった事でしょう。
ここで、王様ランキングにたくさんある名シーンをいくつかご紹介します。
「オレだけはどんな時もお前の味方になってやるぜ!」
(カゲ:「王様ランキング」1巻 第2話より引用)
これはカゲがボッジの境遇とその心の強さを見て、彼の味方になろうと決意する場面でのセリフです。
この言葉の通り、彼は本当にどんな状況であってもボッジの味方としてそばにあり続けます。
「必ずやお前の期待に応えられる王様になってみせるぞ!」
(ダイダ:「王様ランキング」3巻 第41話より引用)
ダイダがボッジの事を思い出しながらも、自らの力で王になることを決意するセリフです。
このセリフに彼のコンプレックスや今まで積み重ねてきた努力への想いが詰まっていて、思わず感情移入してしまう名シーンでした。
「なら私は堂々と正面から行くまでよ!」
(ヒリング:「王様ランキング」5巻 第61話より引用)
自分と息子ダイダのピンチの際にヒリングから出たセリフです。
ネタバレになるので詳しくは言えませんが、誰が敵か分かった上でまっすぐと立ち向かって行く姿にとてもしびれました。
王様ランキングではキャラクターの心情を表すための回想シーンが度々見られます。
先程紹介したシーンの前後でも各キャラクターは心に秘めた想いを思い浮かべ、その心理描写をより立体的に表現しているのです。
そして、こういった表現がストンと心にはまるのはこのシンプルな絵柄であることが大きく関係しています。
絵の描き込みが多い漫画は、
- 絵の上手さ
- コマ割りの躍動感
- アクションの迫力
- キャラクターの心情
といった風に、受け取る情報がたくさんありますよね?
ですが王様ランキングは可愛らしいシンプルな画風で漫画を表現しているので、キャラクターの心理描写に集中しやすいといった特徴があります。
一人一人のキャラクターの心の動きに焦点を当てた作品であるからこそ、読み手は心を動かされ、ストーリーにのめり込んでいってしまうというわけなんですね。
王様ランキングは面白い!
いかがだったでしょうか?
王様ランキングには様々な想いを抱くキャラクターがたくさん登場します。
きっとあなたの心にぴったりはまるシーンがあるので、第一印象で読むのを諦めていた人も是非一度読んでみてください。
1巻読み終わる頃にはあなたも王様ランキングにはまっていること間違いなしですよ?