白暮のクロニクル

【白暮のクロニクル】最終回ネタバレあり!極上ミステリーの魅力と感想

画像引用元:ビッグコミックBROS.NET

「機動警察パトレイバー」、「究極超人あ~る」等が代表作として知られるゆうきまさみ先生初のミステリー漫画「白暮のクロニクル」!

2017年に全11巻で幕を下ろした本作ですが、今回は最終回のネタバレを含めたこの極上ミステリーの魅力についてご紹介したいと思います。

この作品を簡単に説明するなら、

現代社会を生きる吸血鬼「オキナガ」である雪村魁(ゆきむら かい)と厚生労働省の新米公務員、伏木あかり(ふせぎ あかり)がタッグを組む探偵物語

となりますが、

白暮のクロニクルの面白さは単なる探偵物語ではなく、「不老不死」の存在である吸血鬼が現代社会に存在しているという点にあるのです!

この記事では、

オキナガの実態!不老不死の人間が生きる場所

作品を引き立てるキャラクター達

吸血鬼と人間の生きる時間の違い

について主に紹介させていただきます!

埋もれさせておくには勿体ない!!
ミステリー好き・吸血鬼好きの方にもおすすめな「白暮のクロニクル」!

まずは作品のあらすじについて簡単にご覧下さい♪

白暮のクロニクルのあらすじ

画像引用元:「白暮のクロニクル」1巻表紙

舞台は現代社会日本、不老不死の吸血鬼と呼ばれる「オキナガ」と呼ばれる人達が生きる世界。

厚生労働省の新米公務員である伏木あかりは、突然彼等を管理する部署である「夜間衛生管理課」に配属される事となりました。

不死であるはずのオキナガの惨殺事件に遭遇し、怪死事件を追う任務を与えられたあかりは通称「殺人図書館」と呼ばれる場所で「オキナガ案件」を担当する雪村魁と出会います。

画像引用元:「白暮のクロニクル」1巻 第1話

一見少年に見える彼の実年齢は88歳。

最初は信じられないあかりでしたが、目の前で刺されて死んだはずの雪村が起き上がるのを見てオキナガというものを理解する事になります。

画像引用元:「白暮のクロニクル」1巻 第2話

様々なオキナガが関わる事件の解明のためにタッグを組む事になった2人。

そしてその事件の中であかりは、雪村が「羊殺し」という連続殺人鬼を追っている事を知るのです。

現代を生きる吸血鬼!物語の魅力をご紹介

画像引用元:「白暮のクロニクル」1巻 第4話

あらすじにあった通り、白暮のクロニクルでは主に「羊殺し」と呼ばれる殺人鬼を追う事を目的にストーリーが進んでいきます。

ですが、この作品の魅力を語る上で外せないのはなんといってもその世界観です!

厚生労働省や政府の役人等、現実感を強調するような登場人物が多い中で自然と存在する「不老不死」という存在。

「オキナガ案件」と呼ばれる事件の裏には常に彼らの存在があり、そんな彼らもまた表向きはこの国に生きる民間人として扱われています。

「もしも死なない人間がいた場合、国は彼等をどのように扱うのか」

不死身で永遠に楽しく暮らしているようなイメージのある吸血鬼ですが、この世界における彼らはあくまで不老不死なだけで普通の人間です。

彼等の存在が物語にどのように絡んでくるのか、ここでは私が考える白暮のクロニクルの魅力を3つのポイントに分けてご紹介していきましょう。

オキナガの実態!不老不死の人間が生きる場所とは

画像引用元:「白暮のクロニクル」5巻 第1話

「長命者」いわゆる「オキナガ」は現在、国内に10万人ほど存在すると推定されているが、住民登録をせず居住地を転々とする者も多く、その実数を把握しきれていないのが現状である。
病原菌等に極度に強い体質によって長命者自身が疾病を発することはないが、本人が意図せぬ保菌者となる可能性は高い。

引用元:「白暮のクロニクル」1巻 第6話

これは、あかりが「夜間衛生管理課」に配属されてから復習していた「長命者援護法」に書かれていた一文です。
つまり、この世界においてオキナガは国の法律で管理する対象として扱われてるという事になります。

ま、まるで野生動物扱い…!

そして、最初にオキナガとは吸血鬼であると紹介しましたが、実際のところ「吸血鬼」とはオキナガの蔑称です。

彼等の吸血鬼らしい特徴と言えば、紫外線に弱くて活動時間が夜であるという事くらいで、ニンニクや十字架も効きません。
そんなオキナガの特徴をまとめると次の通りです。

  • オキナガに噛まれても吸血鬼にはならない
  • 吸血は必ずしも必要なものではない(代わりに生肉を好む)
  • 死にかけの人間にオキナガの血を与えると1/1200の確率でオキナガに成り上がる

よくあるファンタジー物に登場する吸血鬼は生き血をすすって仲間を増やしますが、オキナガの場合は仲間を増やしたくても簡単には増やせないのです。

画像引用元:「白暮のクロニクル」1巻 第10話                  

(↑死にかけの人間に”血分け”しても成り上がる事は滅多にありません)

もしオキナガになったとしても、「成り上がる」という言葉が指すのは「オキナガになってそこでお終い」という意味。
見た目も、精神的にも成長する事はなくなり、長く生きる事で知識だけは増えていく状態を指します。

そして「吸血鬼」が蔑称であると言ったように、民間人として扱われているオキナガも日本社会では差別されて生きています。

表向きは受け入れないといけないから人間扱いしているものの、本音では化け物と思われているという部分に現代社会における差別構造そのものを感じずにはいられません。

画像引用元:「白暮のクロニクル」7巻 第3話

(↑こういう差別は未だにあるからこそ、オキナガという存在がリアルに感じられます。)

更に、オキナガは住民登録する事で次のような義務が課せられます。

  • 長命者登録しなければ住居、仕事が探せない(登録後は一度施設に送られる)
  • 登録者は一か月毎の検診が義務付けられる
  • 海外旅行は禁止、国内も二泊以上の旅行は届け出が必要
  • 子供の姿のオキナガは特定の要件を満たさない限り施設から出る事は出来ない 

これはなんというかもう……病原菌の保菌者になりかねない点等を考えれば仕方がないと言えば仕方がないんですけどね。

常に監視されていて少しでも問題があれば施設に押し込められる生活なんて考えたくもありません…。

作品の中に登場するオキナガの中には自ら望んで施設暮らししている人達もいます。

ですが、病気で死ぬ事もない体で毎日代わり映えのない日々を過ごしていくと大体200歳くらいで限界がくるようです。
つまり、自分から日の光に焼かれて自殺してしまうんですね。

画像引用元:「白暮のクロニクル」5巻 第5話

(↑首を吊っても死ねませんが、朝日に焼かれる時に苦しくないように首吊りを選択するようです。)

許可をとって外で暮らしていても、見た目が変わらないせいで10年以上は同じ場所には暮らせない等、社会全体に受け入れられない存在として生き続ける苦しみは計り知れません。

雪村は作中よく外出していますがこれは彼の運が良かっただけで、基本的にオキナガは肩身が狭く、いつ社会から締め出されてもおかしくないような危うい立場にいる存在なのです。

その生き様に考えさせられる!作品を引き立てるキャラクター達

画像引用元:「白暮のクロニクル」3巻 第2話

先程はオキナガの不遇な立場について説明しましたが、そんな世界でも逞しく生きているオキナガは勿論います。

そして、そんな彼等の存在がこの作品の魅力を引き立てているのは間違いありません。

ここではほんの少し、そんな彼等についてご紹介しましょう。

まず、メイン主人公である雪村魁は沖縄の戦争で死にかけますが、その際に現在のあかりの上司でもある竹之内に血分けされて生き延びました。

画像引用元:「白暮のクロニクル」2巻 第4話

実年齢は88歳のおじいちゃんでパソコンの使い方が分からない等年相応の反応を見せる事もあります。

しかし、「成り上がる」の言葉が指すように精神年齢は見た目と同じ18歳で止まっているので少年のような初々しい反応もするようです。

想い人を殺した羊殺しの事を憎んでいて長年追い続けており、作中ではたまに暗い表情を覗かせる事もあります。

現在は「殺人図書館」の管理をしながらオキナガに関わる事件の解決をする所謂探偵のような活動をしており、何の因果か1巻第1話でかつての想い人の孫であるあかりと出会う事になるのです。

3巻では幼い子供の姿をしたオキナガ、時任希梨香が登場します。

画像引用元:「白暮のクロニクル」3巻 第7話

彼女は17年前に行方不明になった娘を探していた時任夫婦の家庭に入り込み、実の娘として振舞う「ヤドリギ」と呼ばれる存在でした。

ヤドリギは保護者となる人間を見つけて寄生し「子供の特権」を享受するが、保護者にしておくメリットがなくなれば平気で捨て去ったり保護者を殺して姿を消す場合もある。

引用元:「白暮のクロニクル」3巻 第10話

500年以上生き続けている彼女は、かつての自分の生まれ故郷にオキナガ達を呼び寄せて村を乗っ取る計画をしていましたが、他のオキナガ達の不審な行動が目についたため雪村達に見つかってしまいます。

雪村と同じく精神年齢は見た目のままで、大人のような振る舞いを見せたと思えば幼い少女のような表情も覗かせます。

最後に、ただ幸せを手に入れたかっただけだと語りながら大人しく捕まる姿には読んだ当時、なんとも言えない気持ちにさせられました。

画像引用元:「白暮のクロニクル」3巻 第9話

(↑村を襲われ、死を待ちながら空を見上げる希梨香)

4巻では、雪村達は怪しい吸血鬼同好会サイトを運営するオキナガ達のリーダー、ムラカミと接触します。

画像引用元:「白暮のクロニクル」4巻 第3話

かつて「革命戦士」と呼ばれ学生運動に参加し、指名手配までされていたムラカミですが、そんな彼の実年齢は177歳!

かつての攘夷運動に参加している最中に新鮮組に切られ、その後オキナガとなります。

若いオキナガ達のガス抜きの為に同好会を運営していると語りますが、オキナガが犯人と疑われる殺人事件が起きた事から雪村に目を付けられました。

行動自体は非常に怪しい彼等でしたが実際には問題はなく、現在は政治家を支援する事で新たにオキナガの革命を成し遂げようとしていたのです。

画像引用元:「白暮のクロニクル」4巻 第9話

(↑形を変えても未だに革命を諦めない姿勢を続けるのはすごいですよね…。)

ちなみに番外編として、どうしても紹介したいのがこの人!
普通なら影が薄くなりそうなものなのに、全力で存在感を放ち続けるあかりの指導役、久保園さんです。

画像引用元:「白暮のクロニクル」1巻 第1話

彼はオキナガではなく普通の人間で、あかりに「夜間衛生管理課」としての指導を行う真面目な公務員です。

ただ、オキナガという長命者が多く存在する本作ですが、オキナガの精神年齢=外見年齢という法則を象徴するように見た目通りとてつもなく「大人」なんですよね…!

彼が画面にいるだけで安心感が全く違う上に、茶目っ気たっぷりなところもあってこの作品の癒し担当も兼任しています!

画像引用元:「白暮のクロニクル」3巻 第5話

画像引用元:「白暮のクロニクル」2巻 第5話

(↑こんな上司が会社にいてほしい…!)

白暮のクロニクルはちょっとした端役でもキャラ立ちがすごいので、読まれる際には是非そんなところにも注目してみてください。

特に、おじさんキャラの描き分けとそのリアル感は要チェックですよ(笑)

雪村とあかりの関係性は?!人間と吸血鬼の生きる時間の違いとは

画像引用元:「白暮のクロニクル」5巻 第9話

最後にご紹介したいのは死ぬことのないオキナガと普通の人間との関わり合いについてです。

生きている時間が違う以上普通の人間同士のような関係を続ける事は難しくなります。

オキナガに成り上がる人間は限られているのでオキナガ同士でパートナーを見つけるというのも難しく、基本的には人間のパートナーを見つけて年老いては見送るという事を繰り返すようです。

3巻に登場する叶一世という芸術家のオキナガは自分の傍にモデル兼パートナーの人間を置いており、1巻冒頭でも雪村が年老いた誰かの病室を訪ねるシーンが描かれています。

画像引用元:「白暮のクロニクル」1巻 第1話

(↑誰かを看取る約束をする雪村)

さて、そこで気になるのは主人公である雪村とあかりの関係性についてですが、作中2人はなんとなくお互いに気があるような素振りを見せています。

幾度となく窮地を共にしている相棒ですから、そのような関係性になる可能性も大いにあるでしょう。

しかし、そういった前向きな関係性があるのと同時にどうしても埋める事の出来ない寿命の差というのも作中では描かれています。

5巻であかりはオキナガの療養施設を訪れる事になりますが、そこにはオキナガの身内・関係者が面会にやって来ます。

画像引用元:「白暮のクロニクル」5巻 第9話

高齢のおばあさんが面会するのは30代程の女性のオキナガです。

しかし、実はこのおばあさんの方が女性の子供で、女性はおばあさんを産んだ後にオキナガになってしまったようでした。

死なないということは自分以外の周りの人間はどんどん亡くなっていくという事です。

だからこそ、このおばあさんも母親を一人残して死んでしまう事をとても悔やんでいました。

そんな変える事の出来ない現実を前にして主人公2人はどういう選択をするのか、それは是非ともご自分の目で確かめていただきたいと思います。

決着の時!羊殺しが行き着く結末とは

画像引用元:「白暮のクロニクル」11巻 第1話

それでは、この作品の肝とも言える存在「羊殺し」との決着はどうなったのか、気になる結末についても簡単にご紹介しましょう。

もしも、

「これ以上ネタバレする前に作品を読んでみたい…!」

と思われた方がいれば、今すぐこのページを閉じて迷わず本屋さんへGOです!

電子書籍もあるので、気になる方はこちらからどうぞ♪

ビッグコミックBROS.NET「白暮のクロニクル」

 

↓以下最終回のネタバレを含みます↓

 

さて、作中の中頃から雪村の追いかける連族殺人鬼「羊殺し」についての情報が少しずつ明らかになっていきますが、紆余曲折を経た結果、その正体が自分の血分けの親である竹之内がかつて殺し損ねた兄弟分、茜丸であることが判明します。

画像引用元:「白暮のクロニクル」9巻 第1話

(↑偽名を名乗る桔梗凪人こと茜丸)

茜丸は生まれつきの快楽殺人者で人を殺すことを生きがいとしていました。

「羊殺し」とは、「美」という字が「大きい羊は美しい」という成り立ちだという話を聞いて彼が思いついた独自の儀式で、茜丸は母親を亡くした幼い子供の為と称して、その年から12年毎に若い女性の臓器抜き取る連続殺人を開始したのです。

偽名を名乗って野良のオキナガとしてあかりと接触し、最後の儀式の為に最初の被害者の孫である彼女を監禁する事に成功した茜丸。

ですが雪村は真っ先に監禁場所を突き止め、あかりが殺されるよりも前に現場に突入します。

画像引用元:「白暮のクロニクル」10巻 第7話

(↑ふいを突かれて腕を切り落とされ、意識を失う雪村)

その後、あかりが茜丸に一撃食らわせた事により事態は好転し、雪村によって倒された茜丸はその罪を明らかにするために警察へと連行されていきました。

唯一の謎、「ボーヤ」と呼ばれる共犯者の存在だけを残して。

画像引用元:「白暮のクロニクル」11巻 第5話

…以上が羊殺しの顛末になりますが、なんと!

羊殺しを捕まえて終わりかと思いきやまだ事件は終わってなかったというまさかの展開に!

ここではあえて「ボーヤ」の正体については伏せますが、長年追い続けていた連続殺人事件の幕切れのシーンが切なくて切なくて…。

最終巻最後の場面がご都合主義ではなく、現実を受け止めて生きるという最初から一貫したテーマで締められているのがまた良いんですよね…!

今回は白暮のクロニクルの魅力を中心にその物語についてご紹介させてもらいました!
まだまだお伝えしていないキャラクターやエピソードもたくさんありますので、もしこの物語が気になるという方がいれば是非一度手に取ってみてください。

最後の展開については、雪村とあかねのその後も含めて直接確認してみることをおすすめします。
百聞は一見に如かずといいますからね!

もちろん、その面白さについては私が100%保証させていただきます!

優れた漫画作品とは

画像引用元:「白暮のクロニクル」11巻 巻末

最終巻で作者はこのように作品を締めくくります。

「過去の優れた漫画ってオキナガみたいなもんです。作者がいなくなった後も生きたまま残り続けています。」
「この作品も、そんな多くの作品に混じって、オキナガのように生き続ける事ができれば、作者にとってこれ以上の喜びはありません。」

引用元:「白暮のクロニクル」11巻 巻末

世の中には数々の名作が存在しますが、「白暮のクロニクル」もまたその中に名を連ねる事のできる作品の一つでしょう。

漫画好きの方にはそれぞれお気に入りの一冊があると思いますが、私が後世にも自信を持っておすすめできる漫画の一つとして「白暮のクロニクル」は外すことができません。

あなたも一度吸血鬼達が生きる世界で極上のミステリー体験をしてみませんか?

以上、白暮のクロニクルについてご紹介させてもらいました!